めがね/作品情報

はじめまして、『めがね』です 〜
7月2日(月)夜・完成披露試写会レポート


 7月2日(月)、東京・汐留。梅雨らしい厚い雲が垂れ込める夕暮れどき、スペースFS汐留前には、すでに長い列ができはじめていました。そう。以前、このサイトで皆さんにお知らせした、完成披露試写会の当日です。 2000 通を超えた中から厳正なる抽選の末、当選した 160 名のお客さまがひとり、またひとりと集まり、会場はあっという間に満席となりました。

 開演のブザーが鳴り、 いよいよ待望の舞台挨拶。主演の小林聡美さんを先頭に、市川実日子さん、加瀬亮さん、光石研さん、もたいまさこさんの 5 人のキャストと荻上監督が登場すると、会場からは大きな拍手と歓声が沸き起こります。


映画を髣髴とさせる、終始リラックスムードの
小林聡美さん、もたいまさこさん

 「本日は、当選おめでとうございます」と口火を切ったのは、小林さん。光沢のある黒のスカートが、映画の中のファッションを彷彿とさせます。「はじめてのお客さまを迎えて、緊張と期待の入り混じった心境ですが、楽しんで観ていただけたらと思います」という様子は、タエコそのものの几帳面で礼儀正しさでした。
  続いて、市川さん、加瀬さん、もたいさん、荻上監督から、それぞれひとことずつご挨拶。「映画全体にゆるい風の吹く映画。どうぞ、ゆるーく楽しんで」との監督の言葉に、出演者一同、大きく頷きます。

 続いて行われたトーク・セッションでは、6人から、『めがね』の知られざる撮影秘話が次々と飛び出しました。

 「私は最初、リラックスできない人の役でしたから」と小林さん。しかし、ロケ地である南の海辺を訪れたとたん、「マイナスイオンとα波の嵐というか……ここでリラックスしないでどうする! という感じ。皆さんも、このゆるさにきっと引き込まれてしまうと思うので、どうぞ気を引き締めてご覧ください(笑)」と、冒頭の監督の言葉を覆す発言(?)も。ロケ地では、 宿 の名物である鶏飯(けいはん=ごはんの上に鶏肉、錦糸玉子、野菜などをのせてスープをかけて食べる料理)を食べた瞬間に「一気に細胞が変化し、あの土地のモードに突入」したのだそうです。


ワンピース姿の市川実日子さん

 「出演者の中では非常にお若い……」と、司会者の問題発言(?)を受けて話しはじめた市川さん。映画の中では高校教師らしいすっきりとしたスーツ姿が主でしたが、この日は、天使のようなふんわりした白のワンピース姿が、女性のお客さまから注目を浴びていました。「大先輩の皆さんに引っ張っていただき……とても楽しい……撮影でした。ええ、ほんとうです」と、隣でふざけて仁王立ちする小林さんたちを横目でちらちら見ながらの、後輩らしい控えめなコメントが笑いを誘いました。

 続いて、『それでもボクはやってない』(周防正行監督作品)など、いまや映画界で引っ張りだこの加瀬さん。「今回の現場は、ほかの作品と比べて明らかに異質。最初、台本をいただいて、やる気十分でロケ地へ行ったんですが……」到着して、加瀬さんの目に最初に飛び込んできたのは、なんと「もたいさんがヤギと散歩している姿」だったとか。「あの瞬間、僕の中で何かが崩れまして(笑)。そのまま最後まで行ってしまった、という感じです」。そして、現場の印象を「早起きしてごはんを食べて、早く寝る。当たり前のことが当たり前に行われていて、すごく居やすかった」と笑顔で振り返りました。

 紺と赤の二本どりのネクタイ姿がおしゃれな光石さん。今回は宿の主人として料理するシーンが印象的ですが、意外にも「料理は一切できませんで、フードスタイリストの飯島さんが影のようにくっついて、全部指導していただきました」とのこと。食べるほうは?と訊ねると、うっ、と一瞬口ごもったあと、「……新鮮でさえあれば、何でもおいしくいただいております」との答えに、会場一同、爆笑。「映画の中ではたそがれ上手だったんですが、実際の私は貧乏性で動いていないとおさまらないタイプ。でも、皆さんを見習って撮影中はゆっくりできました」と、思い出を語りました。

 ゆっくり、のんびり、といえば、まさにもたいさんの持ち味。役作りについて訊ねられると「役作り、ですよね……」とため息。なんでも、東京でいろいろ考えていたのに「現地に入ったとたん、『……無駄だ』と思った(笑)」のだとか。ロケ中は、撮影の合間に1軒だけの小さなスーパーや100円ショップに通って買い物をするなどして、「ほとんど何もやりませんでしたね。頑張って仕事をする、その気持ちすらも奪われる場所(笑)。皆さんも、一度行ってみるといいですよ」とアドバイス。また、きっと誰もがやりたくなる、噂の「メルシー体操」については、「簡単そうでふざけてるみたいな体操ですが、大変なんですよ。帰ってからビリーに入隊した( !! )私ですが、メルシー体操のほうがずっとハード」とのこと。その効果のほどは、もたいさんを見れば一目瞭然?


荻上直子監督

 最後にマイクを握った荻上監督も、リラックス度合いはかなりのものだったようです。「夜、明日の撮影のこととか、考えなきゃいけないことがあっても『ま、いっか!』と寝ちゃう。それが作用して、実にのんびりした、気持ちのいい作品になったと思います」。最後に、タイトルの『めがね』の意味をたずねられても、「深い意味があるんです……というのはウソです(笑)。あんまり考えなくていい映画になってますから」と、これまたゆったりしたコメント。
  誰かがひとこと言うと、それを受けて突っ込みや笑いが弾ける壇上の様子は、まさにロケ地での様子を髣髴とさせるもの。セッション中、終始、同窓会のようにくつろいだ6人の笑顔が印象的でした。

 6人が去ったのち、いよいよ本編の上映です。美しい海辺の風景からスタートして、あっという間の、1時間46分。エンドロールに流れる、撮影中のオフ・ショットを、まるで懐かしい旅の思い出をなぞるように見つめ、大貫妙子さんの主題歌「めがね」の最後の余韻が消えるまで誰一人、席を立とうとしませんでした。
  『かもめ食堂』 DVD収録の特報を観て楽しみにしていたという20代のカップルは「じんわりしみる映画でした。太陽の下で飲むビール、皆でわしわしと食べるエビ、とにかくごはんがおいしそう!」と絶賛。上映が夕方から夜にかけてだったのは、おなかをすかせたお客さまにはちょっと酷(?)だったかもしれません。
  「ゆるい空気がいいですね。映像の光の捉え方がいい。空間も料理も清潔感があって、とにかくきれいでした」と印象を語ってくれたのは 20代の男性。こちらも「見ていたらおなかがすいてすいて!」と、足早に街へと消えていきました。
  友だちと一緒に見に来たという、おしゃれな女性の二人連れ。そのお一人、アパレル勤務のOLさんは、「小林さんをはじめ、皆さんのファッションがすてき。自然な風景と合っていたと思います。まるで自分もあそこへ行ったみたい。リラックスできました」と笑顔を見せていました。
  仕事帰りに待ち合わせて来た、という30代のご夫婦は、やはり『かもめ〜』以来のファン。「都会で仕事をして暮らす生活をしていると、なかなか体験できない世界。映画の中だけでものんびり、ほのぼのできてよかった」とご主人。「今日、映画を観ていて、『ああ、私、疲れてるんだなぁ』と思いました。それに……何でもかんでも理由がなきゃだめってことじゃないんですよね」と奥様はしみじみした様子。そして二人で「今度の休みには、旅行したいね」と声を合わせました。

 見上げると、厚い雲がひととき切れて、空には、映画の中でも清らかに夜を照らしていた月が。月明かりはそれからしばらく、晴れ晴れとした笑顔で帰途につく皆さんの背中を照らしていました。
  お集まりいただいた皆さん、ほんとうにありがとうございました。そして、次はぜひ、もっと多くの方と、劇場でこのゆるやかさを分け合いたい……スタッフ一同、あらためてそう思った、『めがね』、はじめての夜でした。


5人一緒に、メルシー体操のポーズ!
(左から、出演者の光石さん、もたいさん、小林さん、市川さん、加瀬さん)

 

2007/07/09

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