「ドキドキの新宿・タイムズスクエア」編
いつか来る、いつか会える――そう思いつつ、指折り数えて待った日が、ついに「来た」のです。9月22日。そう、映画『めがね』公開の日です。
三連休の初日であるこの日は、朝から快晴。秋晴れというよりは夏の残り香の濃い、強い日差しの中、メイン上映館のひとつである東京・新宿のテアトルタイムズスクエアには、ひとり、またひとりとお客さまの姿が見えはじめました。
別の場所では、まさにそれと同じ思いで、出会いのときを待つ人たちがいました。小林聡美さん、市川実日子さん、加瀬亮さん、光石研さん、もたいまさこさん。そして、荻上直子監督をはじめとする数多くのスタッフたち。初日である今日は、この劇場を皮切りに、首都圏3箇所で計4回の舞台挨拶が予定されています。

この日、テアトルタイムズスクエアに一番乗りしたのは、静岡からお越しの女性のお客さまでした。「小林さん、もたいさんの大ファン。絶対、初日に行こうと決めていました」と語る彼女は、ネットで知り合った同じくファンのお友だちと待ち合わせての参加。笑顔の上に、ちょこんと細身のめがねが載っています。
やはり「友だちと待ち合わせて」来てくださった落ち着いた大人の女性も、めがね姿。「犬が大好きなので、コージと会えるのも楽しみ」と、劇場の中へ足早に消えていきました。
公式ウェブサイトを観てすぐに予約した、と教えてくれたのは、都内から来たカップル。「かもめ食堂が大好きで。男からみても面白かったですよ。ほのぼのしていて」と、男性も期待十分の面持ちです。
会場は満員御礼。初日ならではの華やぎがあふれた劇場内に、開演を報せるブザーが響きました。
記念すべき第一回目の終映後、まだ余韻覚めやらぬ中に登場したのは、キャストの5人と荻上直子監督。「こんにちは!」元気な第一声は、あざやかな赤のブラウス姿の小林さんからです。「いかがでしたか?(会場から大きな拍手) ありがとうございます。私たちも楽しんで作った映画。気に入ってくださったらうれしいです」ついさっきまで南の海辺の空気を共有していたおかげか、会場とキャストの間は、もうすっかりほどけた雰囲気です。
続いて、「初日を無事迎えられてうれしいです」と市川さん。ニットやウール素材の秋らしいコーディネートには、会場から「可愛い!」とため息がもれていました。
「この映画がいろんな人に届くことを祈っています」と深く一礼したのは、ギンガムチェックのシャツ姿の加瀬亮さん。その後を、「一度といわず、二度三度、足を運んで」と、黒フレームのめがねをきりりとかけた光石さんが続けます。
「皆さま、どうも」そのひと言だけでひときわ大きな歓声を集めたのは、さすがもたいさん。「まだまだ残暑厳しい折ですが、ちょっとでもここで涼しい時間を過ごしていただけたなら、何よりです」と言う言葉を、さざ波のような拍手が被います。
「天気もよかったし、こんなにたくさんの方々に観ていただけてうれしい!」と語った荻上直子監督。顔には、満面の笑みがたたえられていました。
続いて始まったのは、なんと「キャスト&監督に質問!」のコーナー。「聞きたいことのある人、手を挙げて!」最初は面食らった会場の皆さんですが、すぐに手が挙がります。
「かき氷は、何杯食べましたか?」との問いに答えたのは、キャスト中もっとも食べたという加瀬亮さん。「数え切れない……(笑)。最初は普通にあずき味で、あとはミルクをかけたりと、自分なりに味を変えながら食べていました」とのこと。
「(ロケ中)何をしてるときが楽しかったですか?」との質問に、「そりゃあ仕事してるときっすよ!」「そうっす!」とテンポよく答えた小林さんともたいさん。さすがの呼吸です。「あと、ヤギとの散歩ですね」(もたいさん)「洗濯かなぁ」(市川さん)と次々披露される中、男性陣の知られざるロケ生活? が明かされることに。
「光石センパイは体を鍛えるのに専念されてましたね! ストイックですからね!!」との小林さんの言葉に「……はい」とおずおずと名乗り出た光石さん。撮影中は毎朝誰よりも早く食堂へ行き、すすんでお茶を入れるなど、「女性キャストに囲まれて、自分の中の女性らしさ(!?)が立ち上がってきたような気がします」との新境地開拓宣言も飛び出しました。
さらに、撮影中、暇さえあれば寝ていたという加瀬さんは「実家に帰った大学生みたい。前に共演したとき(周防正行監督作品『それでもボクはやってない』)の親子役がまだ抜けてなくて、私を母だと思ってたのかも」(もたいさん)とのこと。「疲れてたんですかね……ほんと、すみません」と苦笑する加瀬さん。『めがね』チームならではの、ほのぼのとした中に笑いのセンスの光るエピソードが、立て続けに披露されました。
映画をご覧になった方なら、やはり気になるのは「メルシー体操」の振り付けについて。
「大変だったんですから! ロケに行く前、毎日DVDを観て練習して、ロケ地でも毎晩おけいこして」ともたいさん。ロケ中、もたいさんの部屋からはいつも3拍子のピアノの音が流れていて、小林さんは「よほどこの曲が好きなんだろうなと思っていたら、体操の音楽だった」と撮影当日に驚いたのだそうです。さらにこの日、川崎で行われた舞台挨拶では「最初はあの曲を4拍子だと思っていた。(小林さんに言われて)3拍子だと気づいてから、だんだんテンポが合うようになった」という衝撃の事実(!)が明かされました。
「でも、他のみなさんは撮影日にたった30分くらいで覚えてしまって。私の1カ月はなんだったの?あの時間を返してほしいですよ」と憤るもたいさんに、会場は爆笑。さらに、これから覚えようとするお客さまに「私のようになるか、小林さんたちのようになるか、分かれ目ですよ」と、サクラさながらの不敵な笑みを投げかけ、場を沸かせました。ともあれ、「女優生命をかけて踊り込んだ(笑)、渾身のシーンだと思います」との小林さんの言葉どおり、本当に、一生もののシーンとなりましたね、もたいさん。
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劇中ではサクラのかき氷に捧げるように演奏された、美しくもせつないマンドリンの二重奏は、すべて市川さん・光石さんによるもの。
「去年の暮れから自主練を重ねました」(光石さん)「ロケ地でも毎日、夜遅くまで練習して」(市川さん)と、こちらも特訓に特訓を重ね、心に残る音色に仕上がりました。その音色は、劇場で、そしてサウンドトラックCDでぜひお楽しみください。
「ロケ地のやさしい空気をそのまま撮りたいと思いました。それが伝わっているといい」という監督の言葉に、一同、納得の面持ち。「またぜひ、劇場にお越しください」との小林さんの言葉で、記念すべき第一回目の上映は幕を下ろしました。
さて、同じ会場でもう一度行われる舞台挨拶。お客さまが入れ替わるその合間に、劇場内の売店の様子をチェックしました。
帰り際のお客さまの多くが手にしているのは、やはりパンフレット。タイトルのモチーフである「めがね」をレイアウトした、シンプルなデザインが目を引きます。もちろん内容も、メルシー体操の図解や、女優陣による鼎談(ていだん)など、読み応え十分。舞台挨拶でも、キャストの方々、監督から「メルシー体操を覚えるなら、ぜひ」「撮影の裏話も満載」とおすすめがあったとおりの内容になっています。劇場にお越しの際は、ぜひ手にとってご覧ください。
メルシー体操の軽快なピアノ曲や大貫妙子さんの主題歌を完全収録したCDは、さっそく購入する方多し。「癒される感じでした」「マンドリンの曲が楽しみ。自分でもトライしてみたいです」(ともに女性)のほか、「メルシー体操、マスターします!」(男性)というコメントも。今ごろ、頑張っていらっしゃるかな?
また、かき氷が盛られていたフィンランド・イッタラ社製のガラスボウルを買った20代の女性は「母がイッタラ好きなのでプレゼントです。今度は家族を連れて来たい」とニッコリしていました。
ブザーが鳴り、再び満場のお客さまの前に、キャストと監督が並びました。
「上映前なのでまだいろいろ話せませんが……早くこのいい空気感の映画をお届けしたかった」(もたいさん)、「非常に清涼感のある映画になって……いや、監督がしてくれたと思います(笑)」(光石さん)と、挨拶の言葉が続きます。
みどころを訊ねられた小林さんは「近年まれに見る、台詞の少ない映画。気を抜くと吸い込まれますからご注意ください。とくにサクラ(もたいさん)に集中していると危ないです」と発言。それに対して「そんな(笑)。でも(みどころというより)それぞれ楽しんで観られるところがこの映画のいいところですよ」と、ブラックホール女優(?)の名をほしいままにするもたいさんが釈明する場面も。そういえば、この日のファッションも、まさに吸い込まれそうなモノトーンです。
2回目の舞台挨拶もつつがなく終了……の間際に、「あっ、それと、ご注意をひとつ!」と足を止めたのはもたいさん。驚く会場全体に向けて、「アメやガムをお持ちでしたら、ぜひバッグから出してお手もとに」とアドバイス。「おいしい食べ物がたくさん出てくる映画ですから、きっとおなかがすくと思います。(上映中に)ゴソゴソしたら、周りの方にご迷惑ですからね。こういうの、余計なお世話って言うんですよねえ(笑)」と自ら突っ込みを決め、会場にほっとした空気を残して退場していきました。
劇場の外は、真夏のような陽光。1日はまだこれから、道のりはまだまだ続く! ということで、キャストとスタッフは、次なる会場に向けてバスへ乗り込みました。
→この続きはPART2でお楽しみください!
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